ドバイの象徴とも言える巨大リゾート、アトランティス・ザ・パーム。前回の記事に続き、後半戦もドバイの魅力を余すことなくお届けします。

アトランティス・ザ・パームに宿泊
タクシーでアトランティス・ザ・パームへ
昨日までお世話になったホテルをチェックアウトし、いよいよ今回のドバイ旅行のハイライトとなる「アトランティス・ザ・パーム」へ向けて出発しました。
移動手段は、快適で便利なタクシーをセレクト。車窓から流れるドバイの近代的な街並みを眺めていると、車は人工島「パーム・ジュメイラ」の幹線道路へと差し掛かります。青い空と海に囲まれたドライブはそれだけでも気分爽快。島の中を進むにつれて、徐々に近づいてくるあの壮大な建物のシルエットには、思わず声を上げてしまうほどの高揚感を覚えました。


そしてお昼頃、いよいよ夢にまで見たアトランティス・ザ・パームに到着!エントランスに足を踏み入れた瞬間、豪華絢爛な空間に圧倒され、これから始まる滞在への期待が一気に最高潮に達しました。
ホテルに一歩足を踏み入れて、まず何よりも驚かされたのが、館内に鎮座するとにかく巨大な水槽です。

「ドバイモール」にある世界最大級の水槽も凄まじい迫力でしたが、ここアトランティスの水槽も負けず劣らず、まさに規格外のスケール。まるで海そのものをホテルの壁の中に閉じ込めてしまったかのような、幻想的な光景が広がっています。

透き通るブルーの世界の中を、色鮮やかな魚たちや巨大なエイが優雅に舞い泳ぐ姿は、いつまで眺めていても飽きることがありません。ドバイという街が持つ「世界一」へのこだわりと、圧倒的なエンターテインメント性を改めて肌で感じた瞬間でした。

さらに見逃せないのが、ホテル内に併設された本格的な水族館「ロスト・チェンバー」の存在です。なんと、アトランティス・ザ・パームの宿泊者であれば、この神秘的な海の世界へ無料で何度でもアクセスできるという素晴らしい特典付き。滞在中に心ゆくまで海の中の冒険を楽しめるのは、ゲストだけの特権ですね。
荷物を預けてプールへ
到着したのがちょうどお昼頃だったので、正式なチェックインの時間にはまだ少し早いタイミングでした。しかし、そこはさすが世界的な一流リゾート。丁寧な対応で手際よく荷物を預かってもらえたおかげで、重たい荷物から解放されて一気に心まで身軽に!
部屋に入れるようになるのを待つ必要なんてありません。そのまま水着に着替えて、待ちに待ったプールエリアへと直行することにしました。太陽が降り注ぐドバイの空の下、本格的なバカンスがここから勢いよくスタートです。

「さあ、いざプールへ!」と意気込んでメインの荷物を預けたものの、ここでふと冷静に。やはり、せっかくの絶景プールですから、スマホで綺麗な写真を残したいですし、ちょっとした調べ物や連絡など、手元に置いておきたい必需品は意外とありますよね。
とはいえ、プールに入っている間ずっと貴重品を抱えておくわけにもいきません。そこで、念には念を入れて、プールエリアでロッカーを借りることにしました!
これならセキュリティも万全ですし、何より「荷物がどこかに行ってしまわないか」という心配を完全に手放せます。身軽になって、心置きなくドバイの太陽と極上のプールに飛び込める準備は万端。これで、思いっきり非日常の時間を満喫できそうです!

プールエリアに到着してまず驚いたのが、嬉しいサービス。なんと、無料で専用のソックスが配られていたんです!「これなら素足で歩かなくて済むし安心だ!」と意気揚々と履いて歩き始めたのですが……現実はそう甘くありませんでした。
ドバイの太陽はまさに本気モード。プールサイドの地面は、例えるならまるで熱々に熱された鉄板やフライパンの上! この無料ソックスはかなり薄手なので、地面からの熱を完全に遮断することは難しく、歩くたびにその灼熱が足の裏にダイレクトに伝わってきます。「熱い!熱い!」と、思わず小走りになってしまう場所も少なくありませんでした。
さらに、生地が薄いせいか耐久性にも少し難点があるようで……。しばらく歩き回っているうちに、気づかないうちに擦れてしまい、足裏には穴が空いてしまいました。
もし今後ドバイ旅行を計画していて、「アトランティスのプールを一日中遊び尽くしたい!」と考えている方がいれば、無料のソックスに頼りすぎず、自分でお気に入りの丈夫なアクアシューズやビーチソックスを準備していくことを強くおすすめします。
ホテルへチェックイン

今回宿泊したお部屋の様子を、写真とともにご紹介します! ドアを開けた瞬間に広がるのは、期待を裏切らないゴージャスな空間。「これぞドバイ!」と言わんばかりの非日常感に、部屋に入った瞬間からテンションが一気に上がりました。
ただ、ここで一つ私たちの「作戦」を。 今回、男3人での宿泊だったのですが、エキストラベッドを追加するとなるとプラス3万円というなかなかの出費……。「うーん、それならこの予算を食事やアクティビティに回そう!」ということで、もともとある大きな2つのベッドをピタッとくっつけて、3人で川の字(?)になって眠ることにしました(笑)。
最初は「男3人でベッドをシェア?」と少し笑いもありましたが、結果的には修学旅行のような気分で、夜通し語り合えて楽しかったので大正解でした。
気になるコスパは?実質一人5万円の驚き
さて、皆さんが一番気になっているであろう「アトランティス・ザ・パーム」の宿泊費用ですが、今回の合計は15.5万円でした。
「ドバイの超高級リゾートだし、やっぱり高いんでしょ?」と思われがちですが、実はこの金額、プール、水族館、そして食事代(軽食、朝食)までが全て込みのプランなんです。そう考えると、一人当たり5万円ちょっとで済んでいる計算になります。
宿泊だけでなく、世界屈指の巨大水槽を眺めたり、広大なプールで一日中遊んだり……。そうした「リゾート体験」の全てがセットになっていることを考えると、正直、コスパはかなり高い!というのが率直な感想です。
高級ホテルのホスピタリティをフル活用して、この価格でこれだけ充実した思い出が作れるなら、むしろかなり賢い選択だったと満足しています。これからアトランティスへの宿泊を考えている方は、ぜひこの「セット料金」のお得感にも注目してみてくださいね!

アトランティス・ザ・パーム滞在中の食事についてですが、今回は夕食なしのフリースタイルプランを選択しました。
プールでたっぷりと泳ぎ、灼熱の地面と格闘して(笑)少々エネルギー切れを起こした私たちが向かったのは、ホテル内にある気軽に立ち寄れる軽食スポット。
ここがもう、期待を遥かに超える素晴らしい場所でした! 一歩足を踏み入れると、そこには目移りしてしまうほどの「デザートの山」が……!ケーキやタルト、色とりどりのスイーツが所狭しと並んでいて、見ているだけで幸せな気分になれます。
運動後の疲れた体に、この甘美なスイーツの数々が染み渡ります。どれを手に取ってもハズレがなく、味のクオリティもさすがはアトランティス。リゾートでのアクティビティ後のデザートタイムとして、これ以上ないご褒美になりました。

宝石箱をひっくり返したかのようにキラキラと輝くグミの山は、写真映えも抜群。

昨夜、幸せなデザートタイムを過ごしたあの軽食スポット。実は翌朝の朝食もこちらでいただけるとのことで、朝一番で再び足を運んでみました。
これからのアクティビティに向けてしっかりとエネルギーを蓄えるべく、ここぞとばかりに朝から「がっつり」といただきました。美味しいものを食べて満たされたお腹と心は、今日の冒険への最高の燃料になります。しっかりパワーをチャージして、ドバイ二日目のスタートも万全のコンディションで迎えることができました!
【帰国便への道】ドバイからアブダビへ!タクシー移動で冷や汗をかいた最終日の物語
今回の旅はエディハド航空を利用するため、ドバイからアブダビ空港まで移動しなければなりません。ただ移動するだけではもったいないので、途中でアブダビ観光も楽しんでしまおうという、欲張りな最終日でした。
当初は公共のバスを利用してスマートに移動する予定だったのですが、友達が現地で客引きをしているタクシーを呼んできて、その勢いに乗せられる形で車に乗り込むことになりました。
「これ、本当に大丈夫…?」不安がよぎる車内
乗り込んだ車内は、正直に言って決して清潔とは言えないコンディション。どこか生活感が漂う車内で、「このまま知らない土地へ連れて行かれるのではないか」という少しの不安と、何が起こるかわからないドキドキ感が入り混じります。見知らぬ土地のタクシーで長距離移動をする緊張感は、普段の旅行では味わえない独特なスリルがありました。
まさかの「現金引き出し」指令!
さらにハプニングは続きます。私が「現金の手持ちがないからカードで払いたい」とドライバーに伝えると、彼は「ノープロブレム!」と力強く一言。しかし、そのまま車を走らせ、途中のサービスエリアに停車。そこで「ここで現金を引き出せ」という無言のプレッシャー(というか指示)を受けたのです。
「これなら、最初から大人しくバスに乗っておけばよかったのでは……?」と、内心ツッコミを入れつつ、渋々ATMへと向かう私。まさに「旅の恥はかき捨て」といわんばかりの展開でしたが、結果的には無事にアブダビまで辿り着くことができました。
今となっては、そんなハプニングさえも「旅の醍醐味」として笑い話にできるから不思議なものです。皆さんも海外での客引きタクシーには十分お気をつけくださいね(笑)。こうして無事にアブダビに到着し、最後のアブダビ観光を全力で楽しむことに!
シェイク・ザーイド・モスク
まっすぐに向かったのは、この街の象徴であり、世界中から多くの人々を魅了してやまない「シェイク・ザーイド・モスク」です。

太陽の光を反射して輝くイタリア産の大理石は、まさに息をのむ美しさ。空の深い青色と、建物の白、そして周囲の緑や水面の輝きが見事に調和していて、現実離れした光景に一瞬、言葉を失ってしまいました。
ただそこにあるだけで、圧倒的な存在感を放つこのモスク。「一生に一度は見ておくべき場所」と多くのガイドブックに書かれている理由を、到着して数分で完全に理解できました。

モスクの中へ一歩足を踏み入れると、外の喧騒とは対照的な、静寂で穏やかな空気が流れています。

モスクの内部で豪華絢爛な空間の中でひときわ目を奪われるのが、天井から吊り下げられたシャンデリアの数々です。
世界最大級とも言われるそのシャンデリアは、まるで宝石をちりばめたような美しさ。スワロフスキー・クリスタルがふんだんに使用され、黄金のフレームが温かい光を反射しながら、館内を優しく、そして幻想的に照らし出していました。
単なる照明器具という枠を完全に超え、一つひとつがため息が出るほどの精緻な芸術作品です。その圧倒的なスケール感と細部までのこだわりを前に、私はただ見上げることしかできませんでした。柔らかな光に包まれた空間に佇んでいると、まるで中東の宮殿に迷い込んだかのような、非日常的で贅沢なひとときを過ごすことができました。
アブダビの芸術と知の殿堂「ルーヴル・アブダビ美術館」へ
モスクで心洗われる時間を過ごした後は、次なる目的地「ルーヴル・アブダビ美術館」へと向かいました。
モスクからはタクシーを利用して、約20分ほどで到着します。


タクシーを降りてまず驚かされたのが、美術館そのものの圧倒的な存在感です。 「海に浮かぶ美術館」とも称されるこの建築は、サディヤット島の海岸線と見事に調和しています。特に目を引くのは、ジャン・ヌーヴェル氏が設計したという巨大なドーム屋根。伝統的なアラブの建築様式を取り入れながらも、その姿はどこか近未来的で、洗練された芸術の香りが漂っています。

中に入って最も感動したのが、ドームの隙間から差し込む太陽の光です。 幾何学模様の天井から複雑に重なり合った光が床や壁に降り注ぐ様子は、まるで「光の雨」のよう。刻一刻と変化する光と影のコントラストは、この美術館でしか見られない極上の芸術体験でした。

モスクの荘厳な白とはまた違う、知的好奇心を刺激されるこの場所。展示されている数々の歴史的芸術品はもちろんのこと、空間全体がひとつの壮大なアート作品となっていて、訪れる人を飽きさせません。

アブダビを訪れる際は、この伝統と革新が融合した美術館へも、ぜひ足を運んでみてください。きっと、あなたの感性を揺さぶる特別な出会いが待っています。
倒的な世界観に浸ったルーヴル・アブダビ美術館を後にし、心の中に残る余韻を大切にしながら、そろそろ空港へと向かう時間になりました。館内で触れた数々の芸術作品や、ドームから差し込む光の美しさが頭の中で何度も再生され、まだ夢の中にいるような不思議な感覚に包まれています。
【旅のトラブル】アブダビ空港で直面したオーバーブッキングという洗礼
旅にはトラブルがつきもの……とは言いますが、今回はまさにその洗礼を受けたような出来事でした。
アブダビでの充実した時間を終え、帰路につくべく少し余裕を持って空港に到着した私。ここまで順調だった旅路を噛み締めながら、チェックインカウンターへと向かいました。しかし、そこで告げられたのは「少し待ってほしい」という短い一言。ここから、長く、そして不安に満ちた時間が始まるとは、その時は夢にも思いませんでした。
「待つ」ことの虚無と、忍び寄る出発時間
カウンター前で椅子に腰掛け、呼ばれるのを待ちました。しかし、15分、30分と時間が過ぎても、一向にスタッフからの声はかかりません。周囲の旅行客は次々と手続きを済ませてゲートへと向かっています。
「何か手続きに時間がかかっているのだろうか?」と自分に言い聞かせ、冷静を装っていましたが、出発掲示板を見上げると、予定していたフライトの出発時刻が刻一刻と迫っています。 「このままでは乗り遅れてしまう……」
静まり返ったカウンターの向こう側で、スタッフは淡々と業務をこなしています。何度も時計を確認し、焦りが頂点に達した頃、無情にもフライトの出発時刻を過ぎてしまいました。
突きつけられた現実と、空虚な交渉
流石に黙っていられなくなり、私は再び受付へと向かいました。そこでようやく告げられたのは、「オーバーブッキング」という言葉。席が足りないという現実を突きつけられ、完全にパニック状態です。
英語で状況を説明し、代替案を求めて交渉を試みました。しかし、相手のスタッフはこうしたトラブルに慣れきっているのか、事務的でどこか冷たい態度。こちらの焦りや憤りは全く届かず、まるで機械的にあしらわれているような感覚に陥りました。
最終的に提示されたのは、「エティハド航空で利用できる300ドル分のバウチャー」のみ。
長時間の待機による疲労、そして言葉の壁による無力感。これまでのアブダビでの素晴らしい思い出が、このトラブルのせいで一瞬にして霞んでしまうような、なんとも苦い後味の残る帰国となってしまいました。
旅の教訓として
今回の経験から学んだことは、海外の空港で「少し待ってください」と言われた時、それを鵜呑みにして静かに待つのは禁物だということです。「おかしい」と感じたら、その場ですぐに食い下がってでも確認する姿勢が、自分の旅を守るためには不可欠だと痛感しました。
皆さんも海外旅行の際は、どうかこの「旅の落とし穴」には十分お気をつけください。皆さんの旅が、最後までトラブルなく穏やかであることを心から願っています

空港カウンターでの混乱の渦中、ふと周囲を見渡すと、私以外にも途方に暮れている日本人がいることに気がつきました。 結果的に、今回オーバーブッキングの煽りを受けて搭乗できなかったのは、私たちを含めてなんと計6名もの日本人でした。私のような男性グループだけでなく、若い女性3名も同様に搭乗を断られてしまったのです。
見知らぬ異国の地で、しかもこんな理不尽なトラブルに巻き込まれた者同士。言葉を交わさずとも、そこにいた全員が「同じ境遇」にあるという、どこか張り詰めた、しかし妙な連帯感のようなものがその場に漂っていました。
本来であれば、今頃は空の上で旅の余韻に浸りながらくつろいでいるはずの時間です。しかし、現実はそう甘くありませんでした。しばらく待機を命じられた後、航空会社側の手配により、私たちは空港の外へと案内されることになりました。
「今日はこのままホテルへ移動してください」
そう告げられ、私たちは数台の車に分乗し、深夜のアブダビの街を抜けて指定の宿泊先へと向かうことになりました。楽しかったアブダビ旅行の締めくくりが、まさか空港で足止めを食らい、見知らぬ同士でホテルへ向かう展開になるとは……。
旅にはどうしても計画通りにいかない瞬間がありますが、この予期せぬハプニングもまた、後から振り返れば忘れられない旅の記憶(あるいは苦い笑い話)になるのかもしれません。深夜の車窓から流れるアブダビの街灯をぼんやりと眺めながら、そんなことを考えていました。

空港からの長い移動を終え、ようやく本日お世話になるホテルへと到着しました。 あの空港カウンターでの押し問答と、飛行機に乗れないという不測の事態に直面した極度のストレス、そして深夜という時間帯が重なり、私たちの心身はすでに限界を迎えていました。
空港の喧騒から逃れ、ホテルの静かなロビーに足を踏み入れた瞬間、今まで張り詰めていた糸がふっと切れるような、強烈な脱力感に襲われました。私たち6人の日本人は、もはや言葉を交わす気力すら残っていません。
重い足を引きずりながらチェックインの手続きを済ませると、誰が促すでもなく、それぞれが吸い込まれるように客室フロアへと向かいました。明日のフライトのこと、帰国後の調整のこと――そんな不安は一度心から追い出し、今はただ柔らかなベッドで、この理不尽な一日から解放されたい。そんな切実な想いを共有していたかのように、静まり返った夜のロビーを背に、私たちはそれぞれの休息の場所へと消えていきました。

航空会社側の手配とはいえ、幸運なことに、私たちにはそれぞれ「1人1部屋」の客室が用意されていました。疲れ切った心身にとって、誰にも邪魔されずに休めるプライベート空間が確保されたことは、せめてもの救いでした。
重い足取りでドアを開けた瞬間、目の前に広がったのは、自分一人のために使うにはあまりにも広すぎる、贅沢極まりない空間でした。
本来なら最高のリゾート気分を味わえるはずの素晴らしい部屋なのに、胸の内には少しばかりの虚しさが同居していました。あまりにもスペースがありすぎて、かえって「一人でいること」の孤独感が際立ってしまうような、不思議な感覚。先ほどまで皆と共有していた空港での理不尽な怒りや困惑も、この広い空間の中で静かに溶け出していくような、そんな何とも言えない夜を過ごすことになりました。
【アブダビの予期せぬ停滞】帰国できない朝、ホテルで過ごした長い一日
本来ならば、今頃はすでに日本の自宅に戻り、旅の片付けを始めているはずの時間です。しかし、目を開けるとそこにあるのは、昨日チェックインしたばかりの見知らぬホテルの天井でした。
窓の外に広がるアブダビの強烈な日差しを感じながら、「自分は今、本来いるべき場所にいない」という現実を噛み締めます。この予期せぬ延泊という事態に、どこか夢の中にいるような、ふわふわとした心許ない感覚を覚えずにはいられません。
滞在を余儀なくされた、ホテルの朝と昼
航空会社側の手配として、朝食と昼食をホテルで提供いただけることになりました。空腹を満たすため、あるいはただ時間が過ぎるのを待つために、私たちはホテルのレストランへと足を運びます。
用意された食事は豪華で、決して味は悪くありません。しかし、置かれている状況のせいでしょうか。何気なく口に運ぶ料理も、どこか心ここにあらず、といった味気なさを感じてしまいます。「早く帰りたい」という焦燥感が、どんな美味しい料理の味わいも薄めてしまうかのようです。丁寧なホテルのサービスに救われつつも、やはりここは「日常」ではないのだと、何度も突きつけられるような時間でした。
なぜ、外へ出なかったのか
昼食を終えた後、私たちは揃って客室へと引き返しました。アブダビというエキゾチックな街がすぐ外に広がっているのですから、観光に出かけるという選択肢も当然あります。
しかし、昨日の空港での騒動――あの理不尽なオーバーブッキングと、解決の見えない押し問答――が、私たちの心身を想像以上に深く削り取っていたのでしょう。外に出る気力がどうしても湧いてこないのです。
「もしまた何かトラブルがあったらどうしよう」 「次はいつ空港へ向かうべきか」
そんな不安や疲れが重なり、結局、午後になっても一歩も外へ出ることはありませんでした。広い部屋の中でただ静かに過ごすこと。それは決して贅沢なバカンスではなく、荒波に揉まれた後の、自分を守るための唯一の方法だったのかもしれません。
何もしない、何もできないこの時間が、今の私にはどうしても必要な休息でした。
カスール・アル・ワタン
ホテルの自室でただただ時間が過ぎるのを待ち、溜息をついていた午前中。しかし、お昼を過ぎた頃、ふと私は自分に問いかけました。 「このままアブダビでの時間を、トラブルへの愚痴だけで終わらせてしまっていいのか?」
もちろん、答えはノーです。せっかく訪れたこの美しい街。航空会社のトラブルという理不尽な状況に負けて、旅の思い出まで黒く塗りつぶされてはたまりません。私は重い腰を上げ、何とか気力を振り絞って、ホテルから外へと一歩を踏み出しました。
そんな私が今日選んだ目的地は、アブダビの大統領宮殿である**「カスール・アル・ワタン(Qasr Al Watan)」**です。

圧倒的なスケールと、美しき権威の象徴
タクシーを降りた瞬間、目の前に現れたのは、息を呑むほど壮大な宮殿の外観でした。 空を突くような巨大なドームと、太陽の光を浴びて神々しく輝く純白のファサード。アラブ首長国連邦(UAE)という国の豊かさと、その誇りがそのまま形になったような、圧倒的な「威厳」がそこにはありました。
門をくぐり、広大な敷地内を進むにつれ、昨日までのトラブルでささくれ立っていた私の心が、少しずつ静まっていくのを感じます。

伝統と豪華絢爛が織りなす空間
館内に一歩足を踏み入れると、そこには別世界が広がっていました。
- 息を呑む大ホール: 黄金の装飾と複雑な幾何学模様が施されたドームの下、広大な空間はただただ圧倒的。職人たちがどれほどの情熱を注いでこの装飾を作り上げたのか、想像すらつきません。
- 知の殿堂: 知識を大切にするこの国を象徴するように、膨大な書籍が収められた図書室が。静謐な空気の中、人類の知恵に囲まれているだけで、自分の悩みがひどく小さなことに思えてきます。
- 細部の職人技: 壁一面の細かな彫刻や、幾何学的なタイルワーク。どこを切り取っても絵になる、芸術の極みとも言える空間です。
旅を取り戻すための、大切な時間
カスール・アル・ワタンを歩き回っているうちに、私の中にあった「帰れない苛立ち」や「疲労」が、少しずつ、しかし確実に薄らいでいくのを感じました。
この宮殿の持つ圧倒的な力強さと、洗練された美しさに触れることで、ようやく私の心にスイッチが入ったようです。「トラブルはあったけれど、この素晴らしい景色を見ることができた」――そう思えるだけの余裕が、ようやく戻ってきました。
もし、旅先で何か嫌なことがあったとしても、美しいものに触れ、自分の五感を開くことで、心は回復できる。そんな当たり前のことを、このアブダビの宮殿に教えられたような気がします。トラブル続きの旅ですが、この訪問のおかげで、最後は良い思い出として締めくくれそうです。



カスール・アル・ワタンで心を満たした後、最後にアブダビの代名詞とも言える近代的な高層ビル群をゆっくりと眺めました。空を切り裂くようにそびえ立つ摩天楼は、昨日のトラブルを忘れさせてくれるほど力強く、どこか未来的な輝きを放っていました。この街のエネルギーを最後に肌で感じ、私は今回の予期せぬ延泊の舞台となったホテルへと戻りました。

空港への「専用バス」という名の救い
ホテルに到着すると、航空会社が手配してくれた空港行きの専用バスが、すでに待機していました。オーバーブッキングという理不尽な事態に翻弄された一日でしたが、こうして組織的な送迎の手配を受けると、ようやくこの旅の「終わり」が近づいていることを実感します。
バスに揺られながら窓の外を流れるアブダビの景色を見ていた時、不思議と湧いてきたのは安堵感でした。トラブルによって強制的に滞在を延長されたことで、逆にこの街の別の顔を見ることができた――そんな風に少しだけ自分を納得させながら、空港へと向かいました。
緊張のチェックイン、そして安堵の瞬間
空港に到着し、再びあの悪夢のようなカウンターへ向かうときは、正直に言って心臓が張り裂けそうでした。「また同じことが起きたらどうしよう」。そんな不安が頭をよぎり、足取りは自然と重くなります。
しかし、今回ばかりは運が味方してくれました。 前回とは打って変わって手続きは非常にスムーズ。私の目の前で搭乗券が発行され、ゲートへ向かうように促された瞬間、肩の荷が完全に下りたような感覚を覚えました。
- 無事に搭乗券を手にした安心感
- 理不尽な状況から解放される安堵感
- ようやく帰路につけるという喜び
これらが入り混じり、私はゲートを通過しながら深く深呼吸をしました。
思えば、アブダビでの最後の24時間は、計画とは全く違う形となりました。それでも、トラブルを経験し、それを乗り越えて空港にいる今の自分は、少しだけ以前よりもたくましくなったような気がします。
さよなら、アブダビ。波乱万丈だったけれど、忘れられない思い出の地となりました。いよいよ、日本へ帰ります!

